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日本先天異常学会について
   
   
理事長あいさつ
先天異常学会について  理事長あいさつ
日本先天異常学会The Japanese Teratology Society (JTS)
―50年のあゆみと新たな発展に向けて―

日本先天異常学会理事長
島根大学医学部解剖学講座発生生物学 教授
 大谷 浩(おおたに ひろき)


  日本先天異常学会のホームページをご覧いただきありがとうございます。2010年より理事長を務めております大谷浩より、ご挨拶にかえて本学会のご紹介をさせていただきます。

<JTSの沿革>
  日本先天異常学会は1961年8月に東京で第1回大会が開催されて以来、一度も中断することなく総会・学術集会が開かれ、2010年7月第50回記念大会が淡路島(兵庫)で開催されました。
  生まれつきの障害である先天異常の問題は、1960-61年に発生したサリドマイド事件で、世界中で約1万人もの患者が発生したことから大きな社会問題となり、学術研究の必要性が認識されて日米で同じ年に学会が設立されました。日本先天異常学会は、先天異常の問題は基礎医学と臨床医学にまたがる学際的なアプローチが必要であるとの当時としては非常に先進的な考えに基づき、解剖学、病理学、薬理学、衛生学などの基礎医学研究者と、小児科、産婦人科、外科、整形外科、眼科などの臨床各科の研究者と医師が集まる学際的な学会として設立されました。本学会は、1968年に日本医学会に61番目の分科会として加盟を認められました。邦文誌として発刊された機関誌は、1982年よりすべて英文論文からなるCongenital Anomalies となりました。その後国際誌として着実に強化され、2010年よりScience Citation Index Expanded への収載と、それに伴う2013年からのImpact Factor発表が決定しました。

<先天異常学研究における国際協調>
  この分野における国際協調へ向けて、日本先天異常学会、米国のTeratology Society、European Teratology Society、Australian Teratology Society、の4学会が連合して1983年に国際先天異常学会連合(International Federation of Teratology Societies;IFTS)が発足しました。IFTSは持ち回りで3?4年ごとに合同学術集会またはシンポジウムを開いていましたが、諸般の事情で2006年に活動を休止することになりました。しかし、用語集の作成や各学会が開催する国際シンポジウムなどの形で学会間の国際協調は続いています。

<本学会の学問的・社会的貢献>
  学会発足当時、ヒトの先天異常の原因は不明な点が多く、特に医薬品その他の環境要因がヒトで発生異常の原因になり得ることはごく一部の研究者を除いては認識されていませんでした。サリドマイド事件に続いて水俣病などが起こって環境化学物質の胎児に対する影響が重要視され、環境と先天異常の関係が大きな研究テーマとなりました。この分野の研究で日本先天異学会員の果たした役割は極めて大きいものでした。こうした経過を経て、医薬品ならびに環境化学物質の生殖発生毒性試験が課せられることになりましたが、それらのガイドラインの制定と行政における新医薬品等の生殖発生毒性の審査において、多くの本学会員が中心的な役割を果たしてきました。わが国の生殖発生毒性試験ガイドラインは先進国の中でも最も包括的なもので、他国の範となり、さらに統一国際ガイドラインの制定(International Harmonization)においてもその考えの多くが採り入れられました。
  一方、1970年代に遺伝子配列の解析が可能になって以来、遺伝学研究の中心的な手法は分子生物学となりました。ヒトのゲノム解析が完了し、遺伝子改変動物を用いた実験的研究によって、未知であった遺伝子の機能が次々と明らかにされてきました。正常発生、異常発生のメカニズムが分子生物学研究の大きなターゲットとなり、その結果、多くのヒトの先天異常の分子的基礎も明らかにされ、また臨床的にも先天異常をもった患者に対する診断・治療のアプローチが大きく変わりました。このように目覚ましい医学生物学の発展に伴って、日本先天異常学会の学会発表や論文の内容も時代とともに大きく変遷してきました。まさに、本学会の歴史は医学生物学領域の学問の進歩と軌を一にしてきたと言えます。

<新たな50年に向けて>
  本学会の大きな特色の一つに、その学際性があります。先天異常は原因も病理発生も複雑であり、またその治療や療育には多くの分野の専門家の協力が不可欠です。また、生殖発生毒性の研究者や毒性試験従事者の役割の重要性は今後とも変わることはありません。それぞれの専門分野で研究を深める一方で、分野を超えた幅広い研究者が一堂に会して問題を議論する場としてこの学会が発展していくことが、困難な先天異常問題の克服のためには極めて重要です。新たな50へ向けてさらに本学会をより広く大きく社会に貢献できるよう発展させていくため、先天異常に関わる多分野にわたる研究者が、分野をつないで、あるいは超えて具体的に連携協力する体制づくりを進めているところです。一方で、先天異常学自体のみならず関連する多くの学問分野の著しい進展や社会情勢の激しい変革に的確かつ柔軟に対応していくことも重要であると考えられます。
  先天異常の成因については、ゲノミクス、プロテオミクスなどオミクスの研究からもたらされる膨大な分子レベルの知見を、如何に実際の臨床症例や動物実験における病態および異常形質の詳細な観察、あるいは疫学的な知見と結び付けるか、また、新知見が得られるたびに深化していく遺伝要因と環境要因の複雑な関係を如何に解きほぐしていくか、本学会はこれらの課題に対して多分野の橋渡しをできる可能性を持つ、あるいはその努力をすべき立ち位置にあります。福島第一原発事故による放射性物質や震災・津波により倒壊した家屋等から放出されたバイオハザード化学物質の影響についても学際的見地からの情報提供や支援を継続的に進める必要があります。また、本学会が今後担うべき役割として、サリドマイド奇形をはじめとする器官形成に関する異常のみならず、重大な社会問題でもある生活習慣病に関して、胎生期後半の組織形成期における疾病素因形成機構の解明とその予防という観点も含めて、胎生期の総合的な科学として先天異常学を発展させること、さらに生涯を通じて連続するライフステージの一つとしての胎生期への理解を深めるため、関係する専門職業人ならびに市民を啓発するということなどが挙げられます。
  50年記念大会においてワークショップ「新たな50年へ向けて」が開催され、そこで披歴された様々な提言を呼び水として、将来計画検討委員会によりアンケートを行い、会員の皆様からいただいたご意見を集約して、新たな発展へ向けた具体的な企画として、関係の委員会、理事、評議員の先生方を中心に進めていこうとしています。Impact Factor取得が決定しているCongenital Anomaliesの強化を含めて、これらの活動への本学会会員の皆様の積極的なご参加が、本学会のさらなる発展のため必要不可欠であることは言うまでもありません。何卒会員の皆様の人類福祉および社会へのご貢献の一環として本学会の活動にご協力賜わりますよう、また広く市民の皆さまからの本学会の活動へのご理解とご支援を賜りますよう心よりお願い申し上げます。 
   

 


 
 
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